クレイジー横山です!
どうも!
(続き)
「だめ、全然だめ」
白川先生の第一声。
「…すみません」
「今の左手しか使ってない。右手は?ストレートは?」
「…はい」
「今までの練習、何なの?」
「…」
「もっともっと前に出ないと!」
「はい!」
第2ラウンドのゴングが鳴った。
もう後がないんだ。
前に出ないと。
そうだ。思い出した。
自分を大きく見せろって言ってたよな。
背筋伸ばせ。胸を張れ。
前、前、前。
ぶつぶつ言いながら進む。
ジャブだけじゃなくてストレートも。
当たる当たらないは二の次だ。
とにかく出し続けろ。
相手のローが出なくなった。
よし、押せ、押せ。
リングでうなってるおれ。
けものみたいだ。
何度かリング際に追い詰める。
チャンス!
ここでストレートだ!
そう、白川先生に教わって、半年かかってやっと打てるようになったストレート。
今、おれの唯一の武器とも言えるストレート。
が…決まらない。
これじゃ有効打にならない。
相手も反撃してくる。
こっちも負けるわけにはいかないんだ。
打ち合い。まるでガキのケンカ。
フォームもぐちゃぐちゃ。
こういうの、先生にすごくおこられんだよな。
でも、今は手を止めるわけにはいかない。
体力勝負だ!
いけ、いけ!
ゴングが鳴った。
試合終了。
結局、おれのパンチ、一発もまともに当たらなかった。
(続く)